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トピックス

美術館入場料のお話し

美大を目指す高校生、美大生の方、芸術を学んでいる人、美術鑑賞が好きな人などなど・・・
芸術が好きな人にとって欠かせない場所があります。
それは美術館です。

そこで今回は美術館入場料のお話です。

日本の美術館の入館料の平均は、大体1000円前後〜1800円前後といったところです。
小学生・中学生・高校生は1000円以下のところが多いのではないでしょうか?
大学生、社会人と年齢が上がるに連れてその値段は高くなって行き、なかなか頻繁に美術館に足を運べない・運びにくい、社会人になったら仕事が忙しくて行けない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

美術館に行かない理由は?

令和2年3月の文化庁の「文化に関する世論調査報告書 」によると、「1年間に、コンサートや美術展、映画、歴史的な⽂化財の鑑賞、アートや⾳楽のフェスティバル等の⽂化芸術イベントを直接鑑賞しなかった理由」として、「入場料・交通費など費用がかかり過ぎる」(15.2%)が高く、物理的な距離の問題や経済的な要因が上位と書かれています。

Photo ©https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/92221801_01.pdf 10ページ

どうすれば行きやすくなる?

では、人々が美術館に行きやすくするのにはどんな対策があるでしょうか?
同じく文化庁の「文化に関する世論調査報告書 」によると、「入場料が安くなる(48.1%)」が促進策として最も出された対策案でした。

Photo ©https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/92221801_01.pdf 12ページ

世界で最も入館者数の多い美術館は?

芸術の国として知られているフランスですが、街中の至るところに美術館があり、美術館に行くと子供達が課外授業を美術館内で行っていたり、子供の頃から「美術館に行く」ということが日常生活に溶け込んでいます。

イギリスの美術館・博物館の専門月刊紙「THE ART NEWSPAPER 」の2019年最も人気のある美術館トップ10(入館者数に基づく)では、前回のトピックスでも紹介したルーブル美術館が一位となっています。

Photo ©Top museums © The Art Newspaper; image cc

18歳〜26歳以下は入場料無料のフランス

では、なぜこんなにもフランスでは美術館に行く人が多いのでしょうか?
その理由の一つとしてあげられるのが、年齢割引の年齢制限の幅が日本よりも大きいことがあります。
フランスでは・・・なんと国立美術館・博物館は、18歳〜26歳以下は無料です。


若者を無料にした理由は?

この対策の目的として、フランス文化省 は、「芸術的生活と文化へのすべての子供と若者の参加を奨励することを目的とした芸術的および文化的教育に与えられた優先事項の一部です。」と述べています。

La gratuité pour les 18-25 ans, généralisée à l’ensemble des musées nationaux, s’inscrit dans la priorité donnée à l’éducation artistique et culturelle qui vise à encourager la participation de tous les enfants et les jeunes à la vie artistique et culturelle.

Photo ©https://www.culture.gouv.fr/


その効果は?

この対策を進めたことで、フランスではこのような効果があったようです。
– 美術館におけるこの年齢層の若者の数の増加。
– 美術館に不慣れな若者の入場無料の魅力効果。

plusieurs effets ont pu être observés sur la mobilisation des jeunes de moins de 26 ans, notamment :
– l’accroissement du nombre de jeunes de cette classe d’âge dans les musées ;
– l’effet d’attraction de la gratuité pour des jeunes peu familiers des musées.

さらにフランスでは、多くの国立美術館は毎月第1日曜日が無料です!

また、毎年9月の第3週の週末に開催されるヨーロッパ文化遺産の日には、普段入れない歴史的な施設(大統領府(エリゼ宮)をはじめ各省庁など)や美術館などが一般公開され、見学可能となり、普段入場料が必要な施設も無料になるか、もしくは割引され、普段よりも安く入場することができます。この日には、フランス全土で1万5000を超える歴史的建造物が一般公開されます。

このようにフランスでは国をあげて芸術に力を入れ、文化奨励しています。
日本もフランスと同じく、多くの芸術家が生まれ、浮世絵をはじめとした日本独自の技術で作りあげられた芸術作品が数多くあり、文化芸術が豊かな国です。19世紀にはヨーロッパでは日本美術が注目され「ジャポニズム」と呼ばれ、多くの芸術家に影響を与えました。
こういった歴史も踏まえて、日本も今後美術教育にもっと力を入れ、子供のころから芸術を身近に感じ、親しめるようになっていったら良いなあ、と思っています