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トピックス

地域活性化とアートプロジェクト

前回のトピックスで紹介した、新潟県で行われている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」をはじめとし、全国各地では地域活性化・地方文化創生のために、様々なアートプロジェクトが展開されています。

アートプロジェクトとは?

アートプロジェクトとは、主に1990年代以降の日本で展開されている現代美術の活動のことです。その定義を簡単にまとめると、作品そのものより制作のプロセス(「プロジェクト」がこの部分)を重視したり、美術館やギャラリーという枠に囚われず、外に出て社会的な文脈でアートを捉えたり、アートを通して地域を活性化させようとする取り組みなどを指します。

今までは、美術作品は美術館などの展示施設で展示するものでしたが、そのアートスペース以外の場所で作品展示を行う、という活動が1950年〜60年頃から活発になり、野外美術展やワークショップなど作品を見にくる人を巻き込んだスタイルの制作・展示方法が確立されていきました。

今では頻繁に様々な場所でアート・ワークショップなどが行われていますが、アーティストが自由に制作、また来訪者がその制作プロセスを体験・間近に見る、という意味でも、アートとアーティスト、そして一般の人々との距離をぐんと縮ませた活動だったのではないでしょうか。

地域活性化と地方創生

では日本全国で行われているアートプロジェクトの目的の一つとなっている、地域活性化・地域創生って一体何なのでしょうか?

地域創生:2014年(平成26年)9月3日の第2次安倍改造内閣発足後の総理大臣記者会見で発表された政策で、東京の一極集中を改善、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策のことです。

地域活性化:この言葉は政策と全く関係なく使用される言葉で、地域・地方が、経済力や人々の意欲を向上させたり、人口を維持したり増やしたりするために行う諸活動のことを指します。「まちおこし」や「村おこし」もこの部類に入ります。

地方の人口減少

みなさんご存知の通り、日本の出生率は年々下がり、東京に人口が集中し、地方は人がどんどん少なくなっていっています。
このまま地方に住む人が少なくなっていくとどうなると、その地域に住む人口が減少したことで地域社会=コミュニティや生活の機能が低下、一定の生活水準を維持することができない、過疎化という現象が起こります。

Photo © Cabinet Office, Government Of Japan (内閣府) – http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26pdfhonpen/pdf/s1-2.pdf, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=48500516による

過疎化が進んでいくと、住む人も働く人も相対的に少なくなるので、小学校や中学校などの施設が廃校したり、商店街が衰退(いわゆるシャッター街)したり、医療機関の縮小が行われたり、農業や林業などの後継者不足に陥ったり、様々な弊害が起こります。

東京一極集中のリスク

では、なぜ東京の一極集中を改善しなければならないのでしょうか?

一番のリスクは災害時の混乱です。今東京で大地震やテロが起こったら、首都中枢機能(政府の立法機関・行政機関・司法機関)はほぼ東京なので、それが止まり大混乱に陥ります。さらに、人口や資産が東京だけに集まり、地方と賃金格差や求人率も広がります。そして最近はコロナウィルスが流行っていますが、人口が集中しているため、地方よりも東京の方が感染リスクが高くなっています。

アートプロジェクトと地方創生

地方創生に文化・芸術分野が活用されるようになったのでしょうか?

その理由として、参議院事務局企画調整室が発行する『立法と調査』の 『文化・芸術による地域活性化 -活性化のための施策の方向- 323号』によると、以下のように述べられています。

文化・芸術について、①観光客の集客等による短期的な需要創造には極めて効果的であること、②他の産業分野と比較して人々と産業との垣根が低いことや、地域性が強いこと等により人々が自ら参加する度合いが大きいこと、③中長期的に人的資本の蓄積による新たな需要の創出と地域経済の発展の可能性を内包しており、これからの地域振興の有効なツールである

引用 © https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2011pdf/20111201077.pdf

確かに、地方には独自の伝統工芸品があったり、特産物があったり、そういったものとアートとの相性がうまくマッチしたのかもしれません。地方の風景や伝統文化と現代アートを組み合わせることによって、アートに興味がない人・興味がある人・年齢性別・県内外の交流を増やすことによって、地域の魅力を高めていくというのはとても理にかなった方法だと思います。

また、『美術は大地から』編集長/「大地の芸術祭」総合ディレクターの北川フラム氏はこう語っています。

一方、私にとっては、芸術祭を続けていく中でひとつわかったことがあります。地域課題としては少子高齢化や産業衰退などがもちろんあるのですが、この地域に生きてきた人々にとってもっとも辛いことは、自分が持っている知恵や技術を活かす場が失われていくことです。たとえば、家族にも教えないような、山中で良い山菜の採れる場所。また農業や除雪など日々営んできた仕事にも、彼らだけの特技や知恵がありました。大変だとは言いながら、それらは誇りでもあった。しかし時代の変化は、彼らがそれらを活かし、社会と関わる場を減らしつつあります。

引用 © https://www.echigo-tsumari.jp/media/200106-kitagawafram/, Photo © https://www.echigo-tsumari.jp/media/200106-kitagawafram/

確かに地方の人口が減れば、それだけ人同士のコミュニケーションも減っていきます。今までは、地方から東京に行く、というスタイルが多かったですが、東京から地方へ、地方から地方へ、もっと国内の移動が活発になれば地方の経済も回り、経済成長にもつながります。(そのために新幹線がもっと安くなって欲しいですね・・・)
今はコロナウィルスの状況もあって移動は難しいかもしれませんが、日本各地には様々なアートプロジェクトで地域おこしをしている場所があるので、是非行ってみてください!