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トピックス

アートマーケットにおけるコロナウィルスの影響

2020年に引き続き、世界はコロナウィルスの話題で持ちきりですが、このコロナウィルスはアート界にどのような影響を与えたのでしょうか?

コロナ時代に生まれたアート

フランス、ニース出身のストリートアーティストであるTOOLATEさん(アーティスト名)は、「Les masques des “50 connards”(「50人のクソ野郎」のマスク)」という主題でパリのストリートで街中に捨てられ、放置されたマスクを作品として展示しました。

写真のように、実際に歩行者が通りに投げ捨てたマスクを額に飾り、街の通りに展示。

コロナ対策で、フランスではマスク着用義務化となりましたが、パリを含め、フランスの多くな街では残念なことにマスクのポイ捨てなどの常識を欠いたマナー違反が横行しています。
(現在は罰金が強化されたことにより、昨年よりは減ってきました)

Photo © Toolate / Twitter

このアーティストは、このアートの目的をこのように語っています。

Non seulement, dangereux pour les gens qui nettoient les rues, ils ont aussi beaucoup de chances de finir dans les océans. J’ai beaucoup réfléchi au moyen de traiter ce sujet et c’est alors que j’ai eu l’idée de d’immortaliser ce geste, qui manque de civisme, en l’encadrant comme une œuvre d’art.
(マスクのポイ捨ては、)街の通りを清掃する人々にとっても危険だし、海までもしかしたらたどり着いてしまうかもしれない。そこで私は、このテーマを芸術作品のように組み立てることによって、常識外れなこの行動(ポイ捨てのこと)を撲滅にするという考えを至りました

引用元:https://france3-regions.francetvinfo.fr/paris-ile-de-france/paris/street-art-masques-jetes-rue-50-connards-affiches-paris-1899582.html

コロナがアート市場に与えた影響

先のようにコロナウィルスの状況があってこそ誕生したアートもありますが、このウィルス、アート市場にはどのような影響を与えたのでしょうか?

Photo ©https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-collectors-art-market-2021-report, Sales in the Global Art Market 2009–2020. © 2021 Arts Economics.

Arts Economicsのクレア・マカンドリュー氏による「 The Art Market 2021(2021年のアート市場、PDFは英語)」レポートによると、オンライン販売額は、2019年の60億ドルから2020年には124億ドルへと倍増しました。 また、2019年のアート市場全体の9%を占めるようになり、2020年には全売上高の4分の1になり、すべての売上高に占める割合は2倍以上になったことがわかります。

Online sales value doubled, from $6 billion in 2019 to $12.4 billion in 2020; they also more than doubled as a share of all sales by value, going from accounting for 9% of the overall art market in 2019 to a full quarter of all sales by value in 2020.

引用 ©https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-collectors-art-market-2021-report

続けて、クレア・マカンドリュー氏は2020年にコロナの影響でギャラリーの経済状況が悪化したことを踏まえ、「ギャラリーは今年の後半にそれを見事好転させました。人々は、これらの問題のいくつかをより長く抱えて生きることになり、デジタルマーケティングとデジタル販売の観点からそれを強化しなければならないことに気づいたのです。」とも述べています。

Galleries really did turn it around in the second half of the year. People realized they were going to be living with some of these issues for a longer period, and that they had to ramp it up in terms of their digital marketing and digital sales.

引用 ©https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-collectors-art-market-2021-report

つまり、このパンデミックの状況になったことで、アートギャラリーはオンライン販売に以前よりも積極的になり、さらにオンラインでアート作品を購入する人が多くなったということが分かります。

コスト削減と立場の安定

さらに、2020年多くのアートギャラリーは見本市やアートフェアがコロナパンデミックの影響で中止を受けたことにより、こういった費用のコスト削減に成功し、小さなアートギャラリーはこれらのコストを削減することで、立場を安定させました。

Photo ©https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-collectors-art-market-2021-report, Sales in the Global Art Market 2009–2020. © 2021 Arts Economics.

グラフを見てみると2020年は2019年に比べて、コストが26%から16%と、10%も削減されたことが見てとれます。

“The fact they could pull back all those expenses—like travel and fairs—was obviously huge,” McAndrew said. “But it’s not just when we’re away, it’s when we’re here—entertaining people and having big openings and dinners and all these things that go along with running a gallery. For smaller galleries, those expenses are quite substantial on top of travel and everything, and by cutting them back, they managed to either stabilize their position, or in some cases—not the majority by a longshot—did a little bit better than the year before.”
「旅行や見本市など、これらすべての費用を回収できるという事実は明らかに大きかった」とマクアンドリュー氏。「しかし、人々を楽しませ、大きなオープニングやディナーなど、私たちの在否にかかわらず、ギャラリーの運営に伴うすべてのことを行います。小規模なギャラリーの場合、これらの費用は旅行やすべてに加えてかなりの額になります。それらを削減することで、彼らは自分たちの立場を前年よりも安定させることができました」

引用 ©https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-collectors-art-market-2021-report

今後の展望は?

レポートによると、従来のアート市場の多くは過去1年間、少ないペースで運営されてきましたが、非代替トークン*(NFT)の市場は、OpenSea、Nifty Gateway、SuperRareなどのデジタル市場で急激な成長を遂げています。

While much of the traditional art market has been operating at a reduced cadence for the past year, the market for non-fungible tokens (NFTs) has seen astronomical growth on digital marketplaces like OpenSea, Nifty Gateway, and SuperRare.

引用 ©https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-collectors-art-market-2021-report

* 非代替トークン(NFT):ブロックチェーンと呼ばれるデジタル台帳上のデータの単位のこと。ビットコインなどの仮想通貨とは異なり、トークンに唯一無二の価値を持させることができる。

これらの成長は、技術的な問題によって長い間妨げられてきたアート市場のセクターのロックを解除するのに役立つ可能性がありますとマカンドリュー氏は分析しています。

コロナによってアート市場も他の市場と同じように大きな影響を受けましたが、見方を変えるとアート作品をよりオンライン上に押し出す動きが高まり、今まで従来のアート作品の販売の仕方に加えて見直し、改善していく部分も浮き彫りになったことがわかりました。確かにテレワークやオンラインミーティング、リモート授業など、このパンデミックが起こったことで、オンラインを上手く利用したサービス・働き方が増えたことも事実です。こういった事実はポジティブに受け取って、これからもアート市場が盛り上がっていくことを切に願います!